― まずは簡単に自己紹介をお願いします。
矢野康彦と申します。2015年から菊乃家でお世話になっております。宮島には2008年から関わっていて、もう16年ほどになりますね。
― 廿日市市の原が矢野さんの地元ということですが、どのようなきっかけでこのお仕事を?
はい、小さい頃から宮島には親しみがありました。地元の原の家のベランダから宮島や行き交う船が見え、観光地として誇りも持っていました。
大学は県外に進学しましたが、卒業後は地元に戻り、観光に携わる仕事がしたいと考えていました。紆余曲折あり、健康食品の営業などを経験しましたが、最終的には「やっぱり宮島で働きたい」という気持ちが強くなり、2008年から宮島のホテルで働き始めました。
― 菊乃家に入られたのはどんな経緯だったのでしょうか?
いくつかのホテルで面接を受け、その中に、今はもう無くなってしまったのですがあるホテルで働くことになり、ホテルマンとしてのキャリアをスタートさせました。
ホテルマンに憧れはありましたが、右も左もわからない状態からのスタートでした。それでも「宮島のために、お客様のために」という一心で、がむしゃらに働きましたね。いつくしまで5年ほど勤めた後、会社都合で退職することになりましたが、その時に改めて「宮島で働きたい」という気持ちが再燃したんです。
そして、いくつかのホテルを経て、縁あって菊乃家に入社することになりました。
― 菊乃家はどんな思いで創業されたのでしょうか?
この建物は、もともとはNTTの保養所だったんです。築50年ほどの建物を利用し、約13年前に「ホテル菊乃家」として生まれ変わりました。
創業メンバーは、現社長の菊川、女将、そしてもう一人いたそうです。様々な苦労もあったようですが、現在の菊川社長、松本専務を中心としたメンバーによって、今の菊乃家の基礎が築かれていきました。
私が入社した2015年は、ちょうど新体制に移行して今年が10年目にあたる年である。そこから「宮島で一番のホテルにしたい」という思いを胸に、スタッフ一同、日々努力を重ねています。
― 菊乃家の「売り」は何だとお考えですか?
客室数は22室と、大きなホテルではありません。しかし、だからこそできる、こぢんまりとした家庭的な雰囲気が、当ホテルの強みだと考えています。「ようこそ我が家に」というコンセプトのもと、アットホームなおもてなしを心掛けています。
ハード面ももちろん大切ですが、それ以上にソフト面、つまりはおもてなしや心からの接客を重視しています。近年はリニューアルも進めており、客室も綺麗になりました。お客様の層も少しずつ変化してきていますが、どんなお客様にも「菊乃家に来て良かった」、「また来たい」と感じていただけるよう、日々精進しています。
― 日々のお仕事で、お客様への対応で、何かこだわっていることはありますか?
当たり前のことかもしれませんが、「挨拶」を大切にしています。「いらっしゃいませ」「こんにちは」という挨拶から始まり、「ありがとうございました」「いってらっしゃいませ」というお見送りまで、必ずスタッフが顔と名前を覚えて、お客様一人ひとりと向き合うことを心掛けています。
例えば、お客様が観光に出かける際に「どこへお出かけですか?」と尋ね、「いってらっしゃいませ、後ほどまたお話聞かせてくださいね」と声をかけたり、戻ってこられたら「今日はいかがでしたか?」と、旅の思い出話に耳を傾けたりしています。
ただ泊まるだけの場所ではなく、コンセプトを大事に「我が家に帰ってきたよう」と感じていただけるような、温かい空間を提供したいと思っています。
― 宮島の中江町の活性化にも力を入れているそうですが、どんな思いで活動されているのでしょうか?
菊乃家が発展していくためには、中江町柳小路が活性化していくことが不可欠だと考えています。
以前は、この通りは人通りもまばらで、寂しい雰囲気が漂っていました。しかし、ここ数年で少しずつ変化が見られるようになり、「菊乃家を目指して来ました」と言ってくださるお客様も増えました。
「こんな道があったんだ」という新しい発見を提供できるのも、この通りならではの魅力であると思います。
菊乃家だけでなく、藤の家さんをはじめ、他の店舗の方々と協力して、この街を盛り上げていきたいと思っています。2年前から様々な取り組みを行っていますが、まだまだ道半ばです。
それでも、私たちが頑張ることで、近所の方々にも喜んでいただけるでしょうし、街全体に活気が生まれると信じています。
― 最後に、中江町に訪れる観光客の皆さんへメッセージをお願いします。
宮島にいらしたら、ぜひ表参道だけでなく中江町、路地裏まで足を運んでみてください。
中江町は、少し地味かもしれませんが、地域の人々や、お店で働く人、学生さんたちが力を合わせて、温かい雰囲気を作り出している場所です。
ロープウェイ乗り場へ向かう通り道として、気軽に立ち寄ってみてください。きっと、宮島の新たな魅力を発見できるはずです。
― 今日は貴重なお話をありがとうございました。
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